沢 登 徹
1 科目の概要
電気生理学は様々な器官,組織が対象となるが,ここでは心臓に焦点を当てる。絶えず拍動,血液循環を繰り返す心臓の機能は心電図,エコーをはじめ種々の検査により検討されている。実際には興奮性細胞より成り立つ心臓の活動は電気活動より支えられている。そこで電圧,抵抗,容量,電流からなる電気的法則を適用して,細胞膜を流れるイオン電流を解析し,その総合として発生する活動電位をもとに,それらの特性,伝導,さらには異常状態下での変化をみる。一方心臓のリズムの統一と乱れから不整脈,さらにイオンチャネル異常と疾患の関係へと巾を広げる。
2 教育方針・教育目標
生物現象を捉える臨床検査には種々あるが,そのいずれもが,現代医療の中で,重要な位置を占めている。その中で,人や動物にて得られたデータが応用されている人の電気生理の基礎を理解する必要から,心臓の電気生理学がある。それらの知識を身に付け,臨床検査の際に対処できるようにすることを目標とする。
3 教育内容
心臓の電気活動を理解するには,細胞の電気生理が基礎となる。これらの基礎知識を学び,病態と電気活動,細胞,組織の興奮伝導と不整脈,さらに疾患との関連についても理解を深める。
回数 |
項 目 |
講 義 内 容 |
担当者 |
1 |
細胞の興奮の仕組み |
細胞が興奮して生じる活動電気波形とイオン電流,活動電位に関する種々特性を理解する。 |
沢登 徹 |
2 |
興奮波の伝導について |
局所電流を含む伝導の仕組みと心電図波形の形成について理解する。 |
〃 |
3 |
心臓のリズム形成 |
リズムの発生とその修飾を学ぶ。 |
〃 |
4 |
心臓のリズム障害と病態 |
正常と病態時の不整脈の発生機構を理解する。 |
〃 |
5 |
心臓のポンプ機構 |
電気的変化と収縮の関係とその仕組みを理解する。 |
〃 |
6 |
病的状態での電気活動の変化 |
心肥大,心不全などの病的状態とその機構について |
〃 |
7 |
疾患とイオンチャネル障害 |
染色体異常と関連したイオンチャネル病について |
〃 |
4 教科書・参考書
教科書は特になく参考書を挙げておく。
J. Jalife 他:Basic Cardiac Electrophysiology for the Clinican, Futura
1999.
笠貫宏(編集):不整脈,Medical View, 2000.
倉智嘉久:心筋細胞イオンチャネル・心臓のリズムと興奮の分子メカニズム,文光堂,2000.
5 他科目との関連
分泌,収縮,伝導など植物,動物の生物現象の理解の基礎にも役立つ,さらに遺伝学や分子生物学とも関連する。
6 受講上の注意
心電図で見られる現象をより理解できる基礎的な知識を吸収すること。また積極的に質問するように。
7 成績評価方法
レポート提出と出席点で評価する。