窪 田 哲 朗
免疫検査学は免疫検査学(狭義)と輸血検査学からなる。前者を主に窪田が,後者を主に小松が担当する。
1 科目の概要
「免疫検査学」を一言で説明するならば,免疫学的手法を臨床検査に応用する学問ということになろう。特に血清中の抗体を検出する検査法には多くの種類があるが,各疾患の診断のみならず,病期や重症度の判定,予後の予測,治療効果の判定などに役立つ信頼性の高い情報を少量の検体からできるだけたくさん提供するために,先人たちにより多大な努力が重ねられてきた。ほかにも,抗原の検出,補体系の機能,サイトカインなどの免疫調節因子の定量など,近年新しく加わった項目も多い。また,今後も積極的に新しい技術を導入し,よりすぐれた検査法を開発する努力が継続されねばならない。
さて,このような応用学問を追及するためには,まずその基礎としての免疫学を一通り学習しておくことが先決である。細胞工学や分子生物学の技術に支えられて,近年の免疫学の進歩はめざましい。依然として,正常および病態における免疫応答のメカニズムの詳細に関しては不明の点も多いが,いよいよそれらの解明される時が迫っている。
2 教育方針・教育目標
免疫学の全般にわたって,基本的な事項を系統的に理解することを第一の目標とする。併せて,現在実際に臨床検査室で行われている免疫検査の代表的な項目について,具体的に原理・方法を学習する。
3 教育内容
回数 |
項 目 |
講 義 内 容 |
担当者 |
1 |
免疫系−イントロダクション |
免疫機構の役割を理解する。 |
窪田哲朗 |
2 |
免疫系の細胞 |
免疫を担当する各種の細胞について学ぶ。 |
〃 |
3 |
リンパ系 |
中枢リンパ組織と末梢リンパ組織について学ぶ。 |
〃 |
4 |
補体 |
補体系の仕組みと役割を理解する。 |
〃 |
5 |
細胞移動と炎症 |
炎症の局所で何が起こっているのかを学ぶ。 |
南木俊宏 |
6 |
抗体のそのレセプター |
免疫グロブリンの性状や機能を学ぶ。 |
窪田哲朗 |
7 |
T細胞レセプターとMHC分子 |
T細胞レセプターとMHC分子の構造や機能を学ぶ。 |
〃 |
8 |
抗体とT細胞レセプターの多様性 |
抗体やT細胞レセプターが多様性を獲得する機構を学ぶ。 |
〃 |
9 |
抗原認識 |
抗体やT細胞レセプターが抗原を認識する機構を学ぶ。 |
〃 |
10 |
細胞性免疫反応 |
種々の細胞性免疫反応を理解する。 |
〃 |
11 |
抗体産生における細胞間相互作用 |
B細胞が抗体産生細胞に分化・成熟する仕組みを理解する。 |
〃 |
12 |
免疫系の発生と自己寛容 |
T細胞・B細胞がどのように成熟し,自己抗原に対する寛容の仕組みがどのように成立するのかを学ぶ。 |
〃 |
13 |
感染症に対する免疫 |
ウイルス,細菌,真菌,寄生虫に対する防御機構を理解する。 |
〃 |
14 |
ワクチン接種 |
受動免疫,能動免疫の実際について学ぶ。 |
〃 |
15 |
腫瘍免疫 |
腫瘍に対する免疫応答,免疫療法,腫瘍マーカー等を学ぶ。 |
〃 |
16 |
免疫不全症 |
主な原発性および続発性免疫不全症を理解する。 |
小池竜司 |
17 |
アレルギー |
各種アレルギーの病態と臨床検査について学ぶ。 |
窪田哲朗 |
18 |
移植と拒絶反応 |
臓器移植の成否を決定する要因を理解する。 |
〃 |
19 |
自己免疫と自己免疫疾患 |
各種自己免疫疾患の病態と臨床検査について学ぶ。 |
〃 |
20 |
免疫学的手法 |
主な免疫学的実験法,臨床検査法の原理を学ぶ。 |
〃 |
21 |
輸血の歴史と概念 輸血検査の重要性 |
輸血の発達過程,外国および日本の輸血の歴史,輸血検査の特殊性を理解する。 |
小松文夫 |
22 |
血液型の概念およびABO式血液型 |
ABO式血液型を通して赤血球の抗原の概念を理解する。 |
〃 |
23 |
Rh式血液型と各論 |
Rh式の発見とABO式との違いを理解する。 |
〃 |
24 |
赤血球抗体の概念と各論 |
赤血球抗体の基本概念を把握する。 |
〃 |
25 |
その他の血液型の種類 |
その他の血液型全般を把握する。 |
〃 |
26 |
交差適合試験の方法 |
交差適合試験全般を理解する。 |
〃 |
27 |
血液の実際・血液製剤の種類 |
血液製剤の採血,検査,保存,病室への搬入の流れを理解する。 |
〃 |
28 |
不適合輸血副作用とABO異型輸血 |
血管内溶血,血管外溶血,不適合妊娠,自己血輸血について理解する。 |
〃 |
29 |
HLA型の概念と検査法 |
HLAの一般を理解する。 |
〃 |
30 |
骨髄移植の概念と実際 |
白血病を中心とした同種骨髄移植および末梢血肝細胞移植について |
梶原道子 |
4 教科書・参考書
教科書:福岡良男 他 編,臨床免疫学(医歯薬出版)
参考書:宮坂信之 他 編,新版 臨床免疫学(講談社サイエンティフィク)
多田富雄 監訳 免疫学イラストレイテッド(南江堂)
5 他科目との関連
「免疫検査学実習」と表裏一体であり,成績は一括して評価する。
6 受講上の注意
遅刻をしないこと。予習をして積極的に質問して欲しい。
7 成績評価方法
免疫検査学(窪田)と輸血検査学(小松)の筆記試験の成績,および後期の免疫検査学実習の成績を総合的に評価する。