3回環太平洋結合組織学会シンポジウム優秀賞を受賞して

難治疾患研究所成人疾患研究部門(異常代謝)

助教授 畑   隆一郎


 この度,妹尾春樹教授(秋田大学医学部解剖学第二講座)とともに,第3回環太平洋結合組織学会シンポジウム優秀賞を受賞した。このシンポジウムは,太平洋を囲む国々(アメリカ,カナダ,日本,オーストラリア,ニュージーランドなど,実際には欧州の研究者も参加)の結合組織の専門家が3年に一度集まって,研究発表し,議論するシンポジウムです。

 今回はアメリカのDr.Lynn Sakaiが主催し,ハワイ島のコナで1996年11月30日から12月5日まで開催された。およそ200人の研究者が参加し,108題の口頭発表と142のポスター発表があり,このうち優れた研究(我々を含めて2題)に対し優秀賞が与えられた。

 細胞外マトリックス(ECM)はコラーゲンファミリー,プロテオグリカンファミリー,及びフィブロネクチン,ラミニンなどの細胞接着性糖蛋白質ファミリーによって構成されるスパーファミリーで,我々は妹尾博士が本学第一解剖学教室に在職中からECMの代謝制御とその機能について共同研究を続けている。

 我々はECMが形態形成,器官形成において細胞に位置情報を与える重要な機能を持っていると考えているが,その分子機構の解明はECMが不溶性のために生化学的手法や遺伝子工学の手法だけでも,形態学の手法だけでも明らかにはできない点が多い。 

 今回受賞した研究は,肝臓の星細胞(ビタミンA貯蔵細胞)の形態,増殖,機能がECMの立体構造の違いにより可逆的に制御されることを形態学と生化学の手法を併用して証明したもので,Cell Biology Internationalに掲載された。これらの結果に基づき,私のグループは現在主にECMの接着シグナルがどのようにして核内の標的遺伝子の転写を制御するかを明らかにしようとしており,妹尾教授のグループは主にECM接着シグナルの細胞内シグナルカスケードに焦点を当てて研究をしている。いずれ両者の研究は再び共通の標的分子にぶつかり,その時にはECMによる細胞制御の分子機構の全貌が明らかにできると期待している。

 最後に本研究を支援して頂いた多くの方々,特に本学医学部和氣健二郎教授,難治疾患研究所木村彰方教授に感謝致します。


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