鈴木直教授の著書 『輸入学問の功罪―この翻訳わかりますか?』

本学教養部の鈴木 直教授による著書『輸入学問の功罪―この翻訳わかりますか?』が筑摩書房から出版されました。

「輸入学問の功罪」表紙
筑摩書房、2007/01、237ページ、ISBN:9784480063427、\720

翻訳の功罪というとすぐに別宮貞徳の誤訳、迷訳、欠陥翻訳の単行本シリーズを思い出します。記憶を頼りに思い出すと、bulbを球根とせずに電球と訳して誤りに気がつかなかったために、つじつまを合わせるために他の部分もいじってしまい、センテンスがおかしくなってしまった例など、たくさんの例が挙げられ、翻訳作業の大変さを思い知らされました。

しかしながら学問体系を輸入しようとすると翻訳作業は不可欠です。哲学の翻訳を何度も読み始めては投げ出した記憶がありますが、この本を読むとそれは自分が悪いのではなく、啓蒙をしてやろうという態度の学者先生が悪いのだと、少しは慰められます。マルクスやヘーゲルなどの訳書の例から、著者はさらに教養、文化の受容に型をはめてしまったこの国の近代化の根本問題に迫ります。本のタイトルとは少し外れますが、たぶんこちらのほうが著者の言いたかった点だと思います。いずれにしても刺激的な本であることは間違いありません。

この本は、多くの新聞の書評欄で取り上げられました。そのうちのいくつかは下記のサイトに掲載されています。

(和田勝 記)