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教養部長からのメッセージ

20年後の君へ―今なすべきことは

教養部長 服部 淳彦

 かつてレオナルド・ダ・ヴィンチは、ロウソクの炎を見て、こう記している。

「灯を凝視しつつその美しさを観照したまえ。瞬きしてこれをいま一度見直したまえ。そこに君の今見ているものは前にはなかった。そこにかつてあった物はもはやないのである。要素が絶えず死んでゆくものとすれば、灯を再生するものは誰だろう。」

(レオナルド・ダ・ヴィンチの手記、岩波文庫より)

 君たちに、1本のロウソクの灯を見せたら、はたしてどのような反応が返ってくるだろうか。高校までの教育においては、いつも問いが用意され、正解が存在した。そしてその正解に早く到達することが評価されてきた。その教育に慣らされてきた君たちにとって、社会人への扉へと続く大学教育には、きっと戸惑いを感じるかもしれない。なぜかというと、大学入試のために行ってきた「勉強」とこれから学ぶ「教養教育」とは質的に異なるからである。高校までは「自分が~について知っている」ことが大切にされてきたが、これからは「自分が何を知らないかを意識する」ことが大切になる。いや、「自分が何も知らないことに気づく」ことが肝要である。実は気づかないかもしれないが、君たちは「受験」というフレームワークの中でしか考えられない状態になっているのである。失礼を顧みずに言わしてもらえば、それは君たちが幼稚園児と話している時に感じる感覚と似ているのだ。幼稚園児は幼稚園児なりにこれまで知り得た知識や経験、そして感性をフル稼働させて、日々判断し行動している。幼稚園児は瞬く間に成長(成熟)する。これまで知らなかった世界に触れ、さまざまな体験をして、失敗を繰り返しながら自らの世界を広げていく。しかし、幼稚園児は「自分が何を知らないか」ということを意識しない。君たちはどうだろうか。「実は自分は何も知らない」ということに気がついたら、どういう行動を取るだろうか。「知らない世界を知りたい」と思い、それを得ようと努力するのではないだろうか。

 「自分が何を知らないかを意識する」こと、まずそこから始めてみよう。そうすればおのずと気づくと思うが、知らないこと(世界)は、単なる医・歯分野の知識だけではないはずである。将来なりたい医療人としての自分が備えておかなければならない、「幅広い教養と豊かな感性」、そして将来起こりうる「困難な問題に立ち向かう強い心と問題提起・解決能力」をどう養うかではないだろうか。そう今、その通りだと納得した君、そうかもしれないと思った君、もうはじまっているのだ。常に意識することを忘れなければ、20年後、君が理想と思う医療人に近づいていると思う。期待している。

(『東京医科歯科大学教養部 履修の手引き』より転載)