連歌と連句   寺島恒世

開講日

後期、月曜5時限

授業の目的・内容

俳句は、江戸時代には「発句」と呼ばれ、元来は三十六句からなる作品の文字通り最初の句でした。その三十六句からなる作品とは、「五七五」の長句と「七七」短句を交互に繋いで、合計三十六句で完結するという形のものです。それが俳諧(連句)で、各句は異なる複数の作者によって詠み連ねられます。明治になって、正岡子規が俳句革新運動を起こしたとき、その性格が「非文学的」だとして攻撃の対象とされ、近代はほとんど消滅してしまいます。この授業では、江戸時代に大流行して、今は余り知られていないこの共同制作の文芸の特質を考えます。

具体的には、その歴史から学びます。その起こりは奈良時代に和歌の上句と下句を別の人が作り合ったことにありますが、鎌倉時代・南北朝時代に連歌として複数の人間で制作する形のものが流行し始め、百句単位の「百韻」が定着します。そのルールはなかなか詳細に出来ていて、広く大衆にも及びます。連句はそれを簡略にしたものでした。

次に、そのルール(式目)を検討します。ゲームやスポーツと同様、ルールを知らなければそれを理解することができないからです。それを学んだ上で、連歌・連句ともに、有名な作品を読解・鑑賞します。

ちなみに、共同制作に臨むためには、そのルールの知識とともに、しかるべき教養が必要となりますが、なにより心を通わすことの出来る仲間がなければ成り立ちません。芭蕉と門人たちの深い交流はその信頼を前提としており、芭蕉の名声は、連句をうまく創り上げるための宗匠としての抜群の力量によっていました。

なお、この文芸を理解するには、実践がきわめて有効ですので、授業中に連句を作ることにも挑戦してもらいます。与えられた「五七五」または「七七」に合う表現を試みること。一見難しそうですが、自分の詠んだ句が思わぬ方向へと展開していく面白さは理解でき、日本語の持つ様々な特性を再認識することにもなります。なお、特別の才能や経験は必要となりません。

授業計画

成績評価の方法

学期末に課すレポートによります。

教科書及び参考図書

教科書:『連句 理解・鑑賞・実作』(五十嵐譲介他・おうふう)

参考図書は授業中に紹介します。


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