後期、水曜隔週4・5限
紀貫之が女性に仮託して書いた『土佐日記』以降、平安時代には『蜻蛉日記』『和泉式部日記』『更級日記』など、多くの日記作品が書かれ、それぞれに優れた成果を残しています。しかしながら、鎌倉時代以降になると、概して記録中心のものとなり、文学作品としては低調になるというのがこれまでの文学史一般の把握です。そうした中世の女流日記のなかにあって、鎌倉時代に書かれた『とはずがたり』という日記は、昭和10年代に発見されて以来、特に戦後になって多くの読者に読まれ、高い評価を受けてきました。
後深草院という為政者に仕えた作者が語る体験はかなり衝撃的で、複雑な人間関係の宮廷社会の中にあって苦悩する姿が詳細に描かれています。授業では、平安時代の諸作品や同時代の作品と比較しながら、本作を読み、この日記が何を語ろうとしているのか、その目的はどこにあったのかを考えます。
既に多くの研究がなされているので、諸説を比較検討しながら、新たな読みの可能性を探ることが、授業の最も大きな狙いです。既存の日記文学の定義からはみ出てしまうこの作品を考えることは、文学史の常識をも問い直すことになるはずです。
隔週で2コマ続きの授業です。一回ごとにまとまった時間が取れるので、テーマを定めた議論をしていきます。
出席率30%・授業中の発言20%・レポート50%
教科書:『校注とはずがたり』(松村雄二編・新典社校注古典叢書)
参考図書は授業中に紹介します。