意味とレトリックT・U   板橋作美

開講日

前期・後期、水曜1時限

授業の目的・内容

この授業の目的は、君たちが自分自身でデータをさがし、集め、それを分析することです。

その目的を達成するには、いろいろなことでできるでしょうが、調査したり、実験したりしてデータを集めるのでは、大変です。そこで、君たち自身が頭のなかにもっているデータを使って、それを行います。

それは、言葉です。君たちは、日本語の言葉についての膨大なデータをもっているはずです。広辞苑のような大辞典にも書かれていないデータを君たちはもっているのです。

その一つは、言葉の意味=使い方です。たとえば、「すべて」と「あらゆる」は類義語ですが、それを使い分けているはずです。「当」と「本」もそうです。「当大学」と「本大学」を使い分けるはずです。「はしる」と「かける」も同じでしょう。それらは、両方とも使える場面と、片方しか使えない場面があるはずで、そういうデータを頭のなかから見つけだして、分析してもらいます。

もう一つはレトリック、比喩です。われわれは、知らずのうちに、レトリックを使っています。ほとんどレトリックとは気づかないものもたくさんあります。三日前、三日後と言ったら、「前」と「後」は時間を空間によってあらわすレトリックです。そのほか、ソバ屋へ行けば、月見そば、キツネそば、親子どんぶりがありますが、どれもレトリック、それぞれ隠喩、換喩、提喩というものです。理科系の分野にもレトリックは入り込んでいます。電池、電流、高血圧、炎症、その他たくさんあります。レトリックは、たんなる言葉のあや、余分な修飾ではありません。世界を認識するとき、とくにそれまでにないことやものを発見したとき、しばしばレトリックに頼らざるをえないのです。理科系でもレトリックが使われのはその理由からです。そういう、君たちがふだんは意識しないままに使っているレトリックについて、自分自身でさがしだし、分析してもらいます。鯛焼きを買って、なかにタイが入っていないと文句は言わないでしょうが、たこ焼きのなかにタコが入っていなかったら怒るでしょう。この二つは、別の種類のレトリックであり、それがわかっているから、鯛焼きとたこ焼きでは違うのです。その君たちが「わかっていること」「知っていること」を具体的に取りだして、示してもらいます。

授業計画

はじめの三分の一は意味について、次の三分の一はレトリックについて、私の方から問題を出して、君たちに考えてもらいます。質問をしますので、答えてもらいます。最後の三分の一は、意味またはレトリックについて、君たち自身がデータを集め、それを分析してもらい、発表してもらいます。

成績評価の方法

授業参加度(出席もふくむ)と発表によって、総合的に評価します。

教科書及び参考図書

必要なものは、授業中に紹介します。


リンク:   [人文社会][教養部][東京医科歯科大学]