後期、 水曜4、5限(第1、第3水曜日を除く)
日本の金融業が欧米に大きく遅れをとったひとつの原因は、金融工学の遅れにありました。
株価や債券価格、為替レートなど金融商品の価格は日々変動します。 通常の商品は、その商品の(限界)効用からおおむね価格が決まってきますが、 金融商品の場合は、とてもそのような分析から価格は求められません。 むしろ金融商品の価格の変化は、 短期的には規則性のないランダム・ウォークのようなものだといったほうがよいかもしれません。 価格の変化をランダム・ウォークにたとえ、その将来予測をしてみると、 いろいろな金融商品の現在価値を求めることができるではありませんか。 たとえば、1ドル105円という為替レートのときに、 「半年後に1ドル100円を切るような円高になったら1ドルにつき5円の保証をしてくれる」といった金融商品(プット・オプションといいます)は、 現在いくらの価値があるでしょうか。 オプション、スワップなどいろいろな金融デリバティブが計算できるようになったのは、 1970年代に発達した金融工学のおかげであり、 その中心になったのがブラック・ショールズの偏微分方程式です。 難しそうな名前ですが、これは、 物理学の「熱伝導方程式」や「拡散方程式」を価格理論に応用しただけのものです。 そういう意味で、数学や物理の好きな人にはなじみやすい学問です。
この授業では、野口悠紀雄、藤井真理子というふたりの元大蔵省職員の書いたテキストを用い、 こういう世界もあるのだということを知ってもらうことを目的にします。
毎回、1限あたり一人ずつ内容の発表をしてもらいます (2限続けてあるので、1日あたり二人の発表になります)。 発表に際して、メモを作って全員に配布してください。 メモは事前にメールなどで送付してもらえば、 私のほうで必要部数をコピーしておきます(メールアドレスはokubo.las@tmd.ac.jp)。
テキストにはどうしても物理学のような難しさがありますが、全員がおおむね理解できるよう協力しあいましょう。そして、なるべく1回に2章ずつ進むようがんばりましょう。最後に簡単なレポートを提出してもらうことを予定しています。
また可能であれば、デリバティブを実際に取引している金融機関(おそらく銀行か外国為替ブローカー)や金融先物取引所などを訪問してみたいと思います。
授業における貢献度とレポートにより評価します。
野口悠紀雄、藤井真理子著『金融工学 ポートフォリオ選択と派生資産の経済分析』ダイヤモンド社 2000年出版 3,200円
(最近出版社に在庫がなくなったとのことなので、コピーによる対応も考えます)