東京藝術大学教養科目講義「生物学」
授業の目的
ヒトをはじめとする生物(といっても動物だが)の形態や構造とその機能について学び、なぜこのような多様な生物が地球上に存在するのかを理解する。
授業計画および内容
地球上の生物の多様性から出発して、多様性に戻ってくるという連環方式で、以下のようなトピックを扱う。
1)地球上には多様な生物が存在する
2)多様な生物は神が創造したのか?
3)遺伝するとは?
4)生物は細胞からできている
5)細胞とは
6)細胞の形や機能は遺伝子によって規定される
7)遺伝情報は子に伝えられる
8)生物は繁殖する
9)卵から親に(発生)
10)遺伝情報に誤りが生じる(突然変異)
11)生殖細胞におきた突然変異は子に伝わり集団に広がる
12)生物は進化した
13)環境に適応する
14)ヒトの特徴
15)多様な環境を守る
一つのトピックをはおよそ2回分の講義でカバーする予定。パワーポイントによる図版をはじめとして、録画したテレビ番組(NHKスペシャルなど)、YouTubeなど、いろいろなメディアを使って授業を進める。
参考図書(準教科書として下記の本を挙げておく)
「基礎から学ぶ生物学・細胞生物学」和田勝、羊土社(2006) 3150円
授業で使用したDVDの貸し出し
講義に使ったNHKの番組等を録画したDVDを希望者には貸し出します。美術教育教員控室の長島先生に借りたい旨を申し出て、ノートに必要な事項を記入して借りてください。著作権の問題がありますので、取扱は注意してください。
メールでの問い合わせについて
芸大からメールアドレスをもらいました。質問等があれば下記の宛先に学籍番号と名前を付して送ってください。ただし、間髪をいれずに返事を出すのは難しいかもしれません、そこのところはお許しください。
wada.masaru@fa.geidai.ac.jp
受講に際してのお願い
30回の講義の流れの中で、上に書いた目的を達成するように講義を組み立てます。したがって1回抜けると、分からなくなってしまいます。履修すると決めたら、必ず出席をしてください。
毎回コメントシートを配布しますから、そこに必ず「今日の講義を受けて感じたこと、なるほどと思ったこと、感想など」、「質問」、「分からない点」などをかいてください。質問にはなるべく答えるようにします。講義の途中でも質問があれば聞いてください。
なお、出席回数が不足している学生の成績評価は行ないません。
成績の評価について
シラバスには「出席、レポート、試験で総合的に評価する。」と書きました。夏休み前の7月20日の講義の時間に中間試験をやりました。
レポートについて。 「この講義を聴いてinspireされたもの(具体的なイメージあるいは考え、アイデアなど)を、あなたが得意とする表現方法で表現した作品を制作して提出しなさい。製作意図をA4用紙1枚にまとめたものを添付してください。大きさは三辺の合計が90cmほど。音楽学部の学生さんの場合は、器楽などの演奏(自前あるいは作品)などが考えられるが、工夫をしてみてください。」。締め切りは1月18日です。提出先は美術教育教員控室です。この科目の成績評価を受けたい人は、必ずこのレポートを提出してください。締め切りを1月25日まで延長しますので。
1月25日(火)の授業の時間に試験を行ないます。資料の持込を可とします。試験の範囲は前期から後期まで講義をしたことすべてです。
○4月6日(第1回)
第1回目の講義では、最初にNHKスペシャル「プラネット・アース 第1回 生きている地球」を見ました。地球上には極地から熱帯まで、実に様々な環境があり、そこに様々な形をした生物が生息していることを映像を通して実感しました。このことをまず頭に入れておいてください。
この後、パワーポイントを使って、講義をしようと思ったのですが、教室の映像送り出しがうまくいかずに、スライドをあきらめ、みんなの席まで近づいて質問を受けました。これからもこのような形でみんなに近づきたいと思います。いろいろな要望が出ましたが、どのような形で実現できるか考えてみます。
来週はパワーポイントを使った講義をします。
○4月13日(第2回)
4月13日の講義で使ったパワーポイントのファイルはここにあります。
今日は時間の配分がうまくいかずに、最後に時間が余ってしまってごめんなさい。また、部屋全体が明るすぎてスクリーンが鮮明に見えなかったようで(コメントシートに指摘がありました)申し訳ありませんでした。部屋の照明を落とすことを忘れていました。もう一度、上のファイルを自分のパソコンで見て、今日の話を復習しておいてください。
○4月20日(第3回)
第3回の講義は、最初にスライドを使って分類の話を受けて、生物が神によって創造されたと考えることに矛盾が出てきたこと、進化の考え方が胚胎したこと、ダーウィンがビーグル号での航海によって主の不変を疑うようになったこと、ウォレスに背中を押されるようにして「種の起源」を出版したことを述べて、TBSで放映された「ダーウィンの大冒険」を見ました。全部見ることができなかったので、続きは来週に見ます。
講義で使ったパワーポイントのファイルはここにあります。
○4月27日(第4回))
第4回の講義は、前回のビデオの続きを見ました。ダーウィンの考えたことと、進化がどうして起こるかをわかりやすく、また感動的に描いていましたよね。終わった後にパワーポイントのスライドを使い、現在では進化をどのように考えているか、遺伝子DNAというキーワードをチラリと出しながら説明しました。続いて4回目のスライドの一部を先取りして遺伝、子が親に似ることとについてお話をしました。
講義で使ったパワーポイントは前回と同じですが、4回目の初めの部分を加えてここにあります。
○5月11日(第5回)
第5回の講義は、前回の子は親に似るの実例を受けて、なぜそのようなことが起こるのかを、エンドウをつかって明らかにしたメンデルの話をしました。周到な計画のもとに、面倒な人工授粉を繰り返し、結果を数量的に扱うことによって、得られた結果はせ粒子的な要素という単位を考えることによって説明できることを明らかにしました。現在の遺伝子の概念を作りだしたわけです。そのあとで、血友病のお話をしました。血友病が起こることと、種にしわが出るという現象は劣性ですが、どちらも一つのタンパク質の欠陥によることが分かっていることを説明し、要素、すなわち遺伝子とタンパク質を結ぶ付けました。だんだん本質に近づいてきています。来週もお楽しみに。
講義で使ったパワーポイントはここにあります。最初の部分は4月27日のものと一部が重複しています。
○5月18日(第6回)
第6回の講義では、動物でも植物でも生物は「細胞」から構成されていることをお話ししました。また生物体の階層構造についても触れました。我々は細胞を基本単位として、細胞が集まって組織を構成し、組織が組み合わさって器官ができ、期間の組み合わせで器官系が生まれ、この器官系が複数、重層的に集まって個体が構成されているのです。そのうえで基本単位である細胞の一般的な構造のお話をしました。これらは細胞という舞台でこれから演じられる劇の舞台装置のようなものです。面倒でしょうが覚えておいてください。
講義で使ったパワーポイントはここにあります。また「Google Body」はここに、細胞の内部の1と2はそれぞれこことここにあります。
○5月25日(第7回)
第7回の講義では、遺伝子の本体はDNAであるというお話をしました。これでいよいよ核心に近づいてきました。最初にお話ししたアカショウビンやカワセミの羽の色は(我々の髪の毛の色も)遺伝子DNAの設計図をもとにタンパク質が作られることによって実現されていたのです。エンドウの種子の「しわ」も同じでしたよね。一つの酵素が欠陥品だったためにしわができてしまったのです。DNAの塩基ATCGの3つずつの並び方が、アミノ酸の並び方を決めていて、それによってタンパク質の形や性質が決まっていたのです。
講義で使ったパワーポイントのファイルはここにあります。
○6月1日(第8回)
第8回の講義では、前回の残りを終わらせ、そのあとでNHKスペシャル驚異の小宇宙人体V「遺伝子」シリーズの第1回目「生命の暗号を解読せよ ヒトの設計図」を見ました。講義とビデオによって、ヒトの設計図はDNAという分子の塩基の並び方(3つずつ)によって決まることが理解できたと思います。
○6月8日(第9回)
第9回の講義では、最初に遺伝子音楽についてお話ししました。遺伝子の起源とかRNAワールドについてはちょっと難しいので先にすることにして、テーマと変奏、繰り返しという音楽で使われる曲想が、遺伝子の中にもあることを大野乾さんが唱えて、実際に演奏したり(奥さんのピアノで)、論文に発表していること、またその考え方でオオサンショウウオとヒトのHox遺伝子のDNA結合部位の一部を音楽にしたものを聞いてもらいました。また、マウスの抗体タンパク質の一部の遺伝子を曲にしたものも聴いてもらいました。Hoxの音楽のほうはパワーポイントファイルに埋め込んでありますので、クリックすると聞くことができます。また抗体遺伝子の曲はここに、比較のために同じ演奏家が演奏したScriabinのエチュードはここにあります。
そのあとで、もう一度復習を兼ねてDNAとタンパク質の比較をおこないながら、DNAの遺伝情報からタンパク質がどうやって細胞の中で作られるか、お話ししました。我々が作り出すタンパク質はヒトのタンパク質で、材料は食事で食べた肉などを消化分解して小腸から吸収したアミノ酸から作っています。
講義で使ったパワーポイントのファイルはここにあります。
○6月15日
第10回の講義では、第8回とタイトルにある「細胞の数を増やす」を使ってお話をしました。細胞という小さな世界で起こっていることなので、なかなか想像しにくいかもしれませんが、皆さんの体の中で日々起こっていることです。まずDNAを複製して準備をし、それから染色体という形にして(絡まないようにするために)、それから染色体を縦に二分して両側に分配し、細胞を二つ作っていることを、少し大学の講義らしくしながらお話しました。難しかった人はもう一度下のファイルと動画をみてきてください。体細胞分裂の過程は、細胞が数を増やすための原則ですから。
そのあと、細胞分裂と深い関係にあるがんの話を扱ったNHK人体Vの番組の冒頭部分を予告編的に見ました。尻切れトンボで済みませんでした。
講義で使ったパワーポイントのファイルはここにあります。また顕微鏡を使って細胞分裂を観察した動画はここ(動物)とここ(植物)に、またそれを模式化して描いた動画はこことここ(3D)にあります。
○6月22日
第11回の講義では、前回冒頭の部分を見たNHKスペシャル驚異の小宇宙人体V「遺伝子」シリーズの第2回「つきとめよ ガン発生の謎 〜病気の設計図〜」を最初から通してみました。がんは遺伝子が突然変異を起こした結果起こる病気であること、がんの場合は、細胞分裂を進めるrasタンパク質をコードする遺伝子あるいは細胞周期を監視するp53タンパク質をコードする遺伝子に異常が起こったことが多くのがんを引き起こすことが述べられていました。このほかにも新しいテクノロジーがたくさん紹介されていました。細胞分裂と細胞周期の調節との関係でこのビデオを見ました。
そのあとで、パワーポイントを作って講義をしました。個体の数を増やす、すなわち生殖のお話です。無性生殖、有性生殖のお話をして、次に有性生殖に関連して生殖細胞を作る過程(精子形成、卵形成)の過程で必ず起こる減数分裂のお話をしました。
講義で使ったパワーポイントのファイルはここにあります。
○6月29日
第12回の講義では前回終わらせられなかった配偶子形成(精子形成と卵形成)のところから始めました。減数分裂の過程が組み込まれた実際の配偶子形成は、精子形成と卵形成の過程では大きく異なることをお話ししました。女性の人は卵巣の中に減数分裂の途中で止まった卵をたくさん持っているために、放射線やX線の影響を受け易いことを強調しました。ここで使ったスライドは先週の続きで上にあります。
そのあとで次のスライドセットを使って、突然変異について詳しくお話を進めました。鎌形赤血球を例にして、一つの塩基が突然変異によって変わったためにアミノ酸が変化してしまい(ミスセンス突然変異)、ヘモグロビンが会合しやすくなって酸素運搬能力が落ち、さらに細い血管でつまり易くなるということでしたね。
講義で使ったパワーポイントのファイルはここにあります。
○7月6日
第13回目の講義では、第10回とあるスライドセットを使って、前回の残りの部分のお話をしました。突然変異によってタンパク質を構成するアミノ酸が変わってしまい、様々な影響が出る可能性があることを、サイレント突然変異、同義突然変異、ミスセンス突然変異、ナンセンス突然変異、一塩基の欠失あるいは挿入によるフレームシフトによる影響を例として、話しました。具体的な例ではチロシナーゼという酵素の突然変異によってアルビノになるお話をしました。これで突然変異のおはなしはだいたい終わりです。
講義で使ったパワーポイントのファイルは前回と同じものです。ここにあります。
○7月13日
第14回目の講義では、最初にNHKスペシャル驚異の小宇宙人体V「遺伝子」シリーズの第4回「命を刻む時計の秘密 〜老化と死の設計図〜」を見ました。とても興味深い映像がたくさんあり、またこれまで学習した細胞や、染色体、遺伝子の話が実例として出てきて、なるほどと思ったのではないかと思います。もう一度、我々の体はここの細胞の機能の集積として実現されていることを思い出してください。
その細胞の中には(核の中ですが)タンパク質の設計図があり、必要に応じてコピーされ(転写され)、サイトゾールのリボソームで設計図を基にタンパク質のアミノ酸の並び方に置き換えられ(翻訳され)、機能的なタンパク質が作られるのでした。このタンパク質が、酵素の働きを持つものだったり、筋肉のタンパク質だったりして、細胞が形作られ、機能を果たすのでした。もしもこの設計図に誤りが生じ、ふつうは修復されるのだけれど、誤りが残ってしまうことが突然変異でした。
もう一度この流れを復習しておいてください。
ビデオの後、パワーポイントのスライドを使って、早老症の突然変異の実態が明らかになっていることを話しました。詳細は話しませんでしたが、興味があれば、参考図書にあげた教科書の223ページ以降を見てください。パワーポイントのファイルはここにあります。
パワーポイントを映し始めたらスクリーン上の画面の色がおかしくなり、とても見にくくなりました。発生のお話までたどり着いたのですが、次週に発生のところから改めてお話を始めるつもりです。
○7月20日
第15回目の講義の冒頭に見極めテストと称して、中間テストを行いました。すみませんが未だ採点を済ませていません。近日中に済ませます。また問題の解説ものせますので、しばらくお待ちください。
そのあとで先週に少し話し始めた発生の話を、もう一度、改めてお話ししました。卵割によって細胞の数を増やしていくこと、それで胞胚という細胞のシートで包まれた袋状の構造を作ること、それが陥入によって二重の膜になり、おたがいに影響し合える構造になること、このことによって、誘導と分化が始まることをお話しました。全部終わらせることはできませんでしたので、後期はこの続きからお話をします。
その時のパワーポイントのファイルは先週と同じもので、ここにあります。
また、この時見せた動画ファイルは次の通りです。左クリックをして見てください。ウニの発生概略、アフリカツメガエルの発生概略、ウニ中胚葉形成、ウニ陥入、カエル神経管形成まで。最初の2つのファイルを除いた3つのファイルはQuick Time Playerで再生できます。Quick Time Playerがない場合は、Appleのサイトからダウンロードし、関連付けをWindow
Media PlayerからQuick Time Playerに変更してください。そうすれば見ることができます。
それではよい夏休みを。
○10月5日
長い夏休みが終わって、いよいよ後期です。最初の授業は前期の続きからやります。7月20日のところに、中間テストのことに触れていますが、まだ採点も終わっておらず、解説も載せていません。すみません。しばらくお待ちください。それでは10月5日から後期の授業を開講します。
第16回目の講義を行いました。夏休み前に積み残した発生の続きでした。ファイルは7月20日のところに載せてあるものの後半部分です。主に発生の時の情報のやり取りのお話でした。ショウジョウバエを使った実験などの例が出て起案したが、難しかったようですね。覚えておいてほしいのは、発生しつつある場所の細胞同士が信号分子を出し、それを相手側の細胞が受け取って、細胞の運命が決まっていくということです。
そのあとで第12回「人の発生」と題して、これまでのウニやカエルとは異なる、胎生による発生のお話をしました。その前にニワトリの発生のお話をしました。大きな黄身の上に乗った、ほんのわずかな胚盤が分裂して胚になっていきます。ニワトリの発生を見たいというコメントがありましたので、ここに載せておきます。ご覧ください。
その時のパワーポイントのファイルはここにあります。この時も終わりまでゆきませんでした。次週へ積み残しました。
○10月12日
第17回目の講義を行いました。先週の続きでヒトの脳の発達がなぜ可能になったのか、咀嚼筋の退化という新しい説についてお話ししました。
その時のパワーポイントのファイルは、先週と同じですがここにあります。パワーポイントの互換性の問題で動画をスライドに挿入できていません。別に見てください。32枚目のスライドの動画はここに、37枚目のスライドの動画はここにあります。
いずれにしてもヒトの脳の大きさは他の動物に比べて圧倒的に大きくなり、その結果、ニューロンの数を増やすことができ、ニューロンの回路が複雑になったと考えられます。
それから第13回「神経は電気を使うと」いうタイトルのパワーポイントファイルを使って、ニューロン内での伝道のお話をしました。ドミノ倒しのイメージですね。
この時のパワーポイントファイルはここにあります。
また子宮内での胎児の動きなどをお見せしましたが、一部しか見せられなかったNational GeographicsのIn the Wombの全体は次のWebPageで見ることができます。1時間半ほどかかります。
http://video.google.com/videoplay?docid=3055032426000478049#
またもう一つの「Watch the Baby Grow Ultrasounds Week by Week During Pregnancy」の動画はここをクリックすると再生できます。
○10月19日
第18回目の講義は、先週の続きをやって終わらせ、それから第14回スライド「氏か育ちか」へ移りました。
この時のパワーポイントのファイルはここにあります。スライド内の動画はここで見ることができます。
○10月26日
第19回目の講義は、前回の続きの「氏か育ちか」をやりました。全部終わらせる前にNHKスペシャル驚異の小宇宙人体V「遺伝子」シリーズの第5回「秘められたパワーを発揮せよ 精神の設計図を」を見ようとしたところ、プレーヤーでは再生できず、手持ちのノートパソコンで再生しようとしたところ、パワー不足のためか映像がスムースに再生されず、時間を無駄にしてしまいました。結局再生するのをあきらめて、スライドの続き、特にシナプスの可塑性のところを強調して終わりました。
○11月2日
第20回目の講義は、前回うまく再生できなかった人体V「精神の設計図」をもう一度最初から鑑賞しました。なかなか面白い内容でしたね。ちゃんと理解してほしいことは以下の点です。遺伝子はタンパク質の設計図です。したがって設計図に突然変異があれば、タンパク質は性質が変わります。表情筋の付き方や体格、背の高さなどはタンパク質(筋肉の量とか付き方とか)によって決まります。だから一卵性双生児ではそっくりになります。また受容体やトランスポーターもタンパク質です。ですからこれも遺伝子によって完全に規定されています。ドーパミン受容体の繰り返しの数は遺伝します。したがって新規探索傾向は遺伝することになります。国民性とか地域性というのや、その集団にある遺伝子プールによって規定されているぶぶんもあるということです。一方、ニューロン間のつながり方はすべてが遺伝子によって決まっているものではありません。受容体が同じであっても、ニューロン間の配線のでき方によっては、脳の活動に違いが生まれることは十分考えられます。それが、一卵性双生児であっても、全く同じ性格ではない理由です。
氏と育ち、どちらもとても重要ですが、ヒトではおそらく半々というところでしょうか。シナプス可塑性のところで示したように、育ちの部分は大人になっても学習や経験で強化することができます。ヒトは生涯学び続けることが大切な所以ですね。
この時のパワーポイントは前回のものに補足を加えて長くしてあり、それはここにあります。
前回、次回は感覚の話をするといいましたが、せっかくヒトの特徴として脳のことをやったので、もう一回、脳の話として「愛」のお話をします。ただしもちろん生物学的なことですが。お楽しみに。
○11月9日
第21回目の講義は、「愛」についてお話をしました。オキシトシンという脳下垂体神経葉から分泌される、アミノ酸9個からなるホルモンが関係しているという話です。このホルモンは哺乳類で子宮の平滑筋を収縮させる、また乳腺を取り囲む平滑筋を収縮させるホルモンとして発見されましたが、動物では、恐怖の情動行動を抑制する働きがあり、番の間のattachmentを強める働きがあることが知られていました。この働きは人間でも当てはまり、「信頼」関係を作り出すホルモンとしても注目されました。このホルモンが「愛」に関係するというお話です。
講義で使ったパワーポイントのファイルはここにあります。またスライドの中にある動画、鳥の求愛行動はここ、トゲウオの攻撃行動はここ、トゲウオの求愛行動はここ、ニワシドリの行動はここ、オキシトシンとジネズミの行動はここ、解体新ショーはここ、扁桃体の動画はここにあります。
○11月16日
第22回目の講義は、前回終わらなかった途中から続けて、そのあとで、感覚の話をしました。主に聴覚と視覚のお話です。そのあとで、二次元の網膜の情報からどのようにして三次元空間の情報を復元しているのかのお話をしました。拘束条件(たとえば光は上から)があらかじめ脳に組み込まれているから平面でも立体的に見えるのだということをお話ししました。眼が見ているのではなく、脳が見ているのですね。
講義で使ったパワーポイントのファイルはここにあります。ナットのイリュージョンの動画はここにあります。
○11月30日
第23回目の講義は、視覚のイリュージョン(錯視)の動画を見て、眼ではなく脳が外界を見ているのだというお話を前回に続けてしました。イリュージョンの動画もいくつか見ました。それらは、こことこことここにあります。TEDでの講演(少し長い英語の講演)はここにあり案す。
そのあとで「どうして地球上には多様な生物が生息しているのか」というタイトルで地球の歴史と動物地理区のお話をして、その例としてオーストラリアの映像「奇跡の大陸、オーストラリア」を見ました。
講義で使ったパワーポイントのファイルはここにあります。
○12月7日
第24回目の講義は、前回、終わらなかった「奇跡の大陸 オーストラリア」の続きを見て、その後に「地球上の生物の絶滅と繁栄」というタイトルで、白亜紀末に起こった恐竜の絶滅の原因はなんだったのか、その研究を主導した若い地質学者のお話をしました。
講義で使ったパワーポイントのファイルはここにあります。
そのあとで、もう一つの大きな絶滅劇、ペルム紀大絶滅について、NHKスペシャル「地球大進化 第4回哺乳類の誕生」を見ました。
○12月14日
第25回目の講義は、前回終わらなかった、番組の続きを見ました。そのあとで「生物多様性を考える」ということで、ハーディー・ワインベルグの法則のお話をしました。来週もこのお話を続けるので使ったパワーポイントのファイルはまだ載せていません。改訂中なので。
○12月21日
第26回目の講義は、前回の続き「生物多様性を考える」をやり、そのあとで、哺乳類から霊長類への進化のお話をしました。NHKスペシャル「地球大進化 第5回目が語る霊長類の進化」を見ました。今回で年内は最後になりました。課題を出してありますので、それにしたがって提出してください。また、冬休みにはこのページをクリックして、これまでの講義でどんなことをやったか、ぜひ復習してください。
12月14日と21日の前半で使ったパワーポイントのファイルはここにあります。
皆さん、良い年をお迎えください。来年は1月11日から始めます。
○1月11日
第27回目の講義は、ヒトの進化のお話をしました。最初にパワーポイントを使って、ざっと700万年前に現れたサヘロントロプス・チャデンシスからホモ・サピエンスまでの道のりをたどり、とくにオーストラルピテクス・アファレンシスのルーシーについて、直立二足歩行をしていたことを示す証拠についてお話しして、ルーシーにまつわる動画を2つ見ました。続いてNHKスペシャル「地球大進化 第6回 ヒト 果てしなき医冒険者」を見ました。時間配分を誤り、終了時間が講義の時間を超えてしまったことをお詫びします。
講義で使ったパワーポイントのファイルはここにあります。また、ビートルズの「Lucy in the sky with diamonds」の動画はここに、アファレンシスについて描いた「Lucy in the South Africa」はここにあります。また「Homo sapience Who are we?」はここにあります。
○1月18日
第28回目の講義は、「美とは何か」についてのデニス・ダットンのTEDにおける講演のビデオクリップをみました。そのあとである意味で進化の頂点に立ったヒトは生物多様性のために何をするべきかをパワーポイントを使って考えました。さらに多くのリョコウバトやドードーを生まないようにするにはどうしたらよいかを考えましょう。生き物はそれ自体で価値があるのですから。
デニス・ダットンの講演(日本語字幕付き)は以下のリンクをクリックすれば見ることができます。
http://www.ted.com/talks/lang/jpn/denis_dutton_a_darwinian_theory_of_beauty.html
講義で使ったパワーポイントのファイルはここにあります。講義ではパワーポイントファイルに貼りつけたいくつかの動画をお見せしましたが、ここでリンクを張ったパワーポイントのファイルではリンクは無効になっています。各自でYouTubeから探してみてください。ちなみにカカポとキウイの動画のいくつかは以下にあります。
http://www.youtube.com/watch?v=GNBVi7AIcoM
http://www.youtube.com/watch?v=9T1vfsHYiKY
http://www.youtube.com/watch?v=5v5ViXUeofA
http://www.youtube.com/watch?v=4Be5XYhkEnI&feature=fvst
http://www.youtube.com/watch?v=qT5PvMoFYSM&feature=related
1月25日に試験を実施します。持ち込み可です。一度、これまでの授業の内容を振り返って復習をしておいてくださいね。
○1月25日
初めにこれまでの講義全体を振り返って、まとめとなるようなスライドを見せました。その時のファイルはここにあります。
その後試験を行いました。
学生による授業評価のシートを配布し、無記名で記入してもらいました。その結果を別なページに載せておきます。ここをご覧ください。
長い間の聴講、どうもありがとうございました。