生物学(D:個体と多様性の生物学)

 
「生物学基礎」「生命科学特論B」と、主として細胞を中心とした生物学を学んできた。しかしながら「生物学基礎」の階層性のところでお話したように、大多数の生物は多細胞生物である。

 多細胞生物になると、単なる細胞のかたまりではなく、組織ができ、組織の組み合わせで器官ができる。そうすると、個体として調和の取れた活動を営むために、細胞と細胞のコミュニケーションが重要になってくる。この講義では、細胞はどのようにしてその数を増やすか、どのようにして次世代に遺伝情報を伝えるのか、さらにどのようにして多細胞になるのかを学ぶ。さらに、個体が環境の中で生きていくために必要な、体を守る免疫機構、また環境から情報を得る感覚機構などの概略についても学んでいく。

 地球上には、こうして生まれた実にさまざまな生物が生息している。チョット水溜りの水を掬って顕微鏡で覗けば、たくさんのプランクトンが見つかるし、地面を掘って土を調べてみれば、たくさんの線虫のような虫がいる。ふだんは何気なく街を歩いていると、われわれの目線で見ているので、たくさんの人、せいぜい野良猫だとかゴミ漁りをしているカラスくらいしか目に付かないが、チョット目線をずらせば、たくさんの生き物がひしめいている。これらの生物は、多様であるが、基本的な共通した構造や機能を備えている。このような地球上の生物多様性と、なぜ地球上に生命が誕生し、このように繁栄しているかを理解し、正しく評価できるようになることを目標としている。

 必要に応じて課題を与えるので、受講する学生はただ講義を聴くだけでなく、積極的かつ能動的に参加して欲しい。


 教科書は下記のものを指定します。なるべく教科書に沿って授業を進めるので、各自が必ず予習をして講義に臨み、講義のあとは復習してください。

   教科書:基礎からはじめる生物学・細胞生物学 和田 勝 羊土社 平成18年

 生物学では、図や動画が理解を進めるために効果的です。そこで、パワーポイントを使用して講義を進めます。パワーポイントはノートがとりにくいという意見を聞きますが、効果的な図のことを考えると使用を止めることはできません。また、パワーポイントのハンドアウトを事前にほしいという意見がありますが、パワーポイントにメモを書き留めるのはこの段階ではあまり効果的だと思いません。ぜひ自前のノートを用意して、そこに自分の言葉でスライドの内容や聞き取ったことを書き取ってください。講義のあとは、ノートとパワーポイントの内容と教科書を元にもう一度まとめなおす作業をすることによって理解が進むと思います。

 パワーポイントのファイルの1回分を一回の講義で完了していない場合があるので、少しずれが生じています。ただし、使用したパワーポイントのファイルはすべて載せてありますので、見ておいてください。

 補講の日(2月3日)は、最初にアクションシート4をやり、大急ぎで答え合わせをして、その後、集団遺伝学について簡単に触れ、多様性を促した外的要因についてパワーポイントファイルを使い、お話しました。また、多様性を守ることについてもちょっと触れました。このとき使った3つのファイルを載せてあります。

 第14回目の講議(2月1日)は、小生の都合により短くなりましたが、外界の情報をどう受け取るか、すなわち感覚の話をしました。ここでも、たくさんの用語が出てきました、正確に覚えておいてください。視覚の情報の受け取り方の基本を理解しておいてください。

 第13回目の講議(1月25日)は、神経伝達について詳しく学びました。あまり教科書にも触れらていない内容をお話しました。EPSPとIPSPに土江はよく理解しておいてくださいね。また、行動の基本的なこともお話しました。

 第12回目の講議(1月18日)は、最初に冬休みの課題を集めました。その後、パワーポイントファイルを使い、個体のまとまりとしてホメオスタシス、特に浸透圧調節の話を簡単にして次に、静止電位、活動電位についてお話をしました。ニューロンの基本的な形態や名前、さまざまなタンパク質が働くことによって静止電位や活動電位が生じることを、お話しました。たくさんの用語が出てきました、正確に覚えておいてください。

 第11回目の講議(12月21日)は、体液性免疫と細胞性免疫の全体像がわかるようにYouTubeの動画を見ました。その後で、冬休みの宿題を出しました。課題のページを見てください。その後、NHKスペシャル人体V「遺伝子」から第4週の「命を刻む時計の秘密 老化年の設計図」を見ました。冬休みは遅れを取り戻すチャンスです。ぜひ復習をしてください。なおHutchinson-Gilford症候群に関して紹介しましたが、読むのは次の3つがいいのではないかと思います。右クリックしてファイルとしてダウンロードして、読んでみてください。3つのタイプの論文を載せておきます。(12月21日記)。

 概観総説Natureの原著論文。いずれもちょっと難しいかもしれませんが挑戦してみてください。

 第10回目の講議(12月14日)は、予告したとおり、冒頭にアクションシート3をやりました。もっと復習をしてください。その後で、免疫のTの残りと免疫Uをやり、駆け足でしたが免疫の大筋終わらせました。さらにその後で、生きることt、死ぬことをやリましたが、途中で終わりました。来週で年内最後の講義が終わります。冬休みの宿題を出すつもりです。教科書を見て、さらにいろいろな本をどんどん読んでください(12月19日記)。

 第9回目の講議(12月7日)は、免疫のTをやりました。今回はアクションシートをやりませんでしたが、来週はやるつもりです。でも自分でも復習をしてくださいね。今回は免疫Uの途中まででした。来週はこれを終わらせて、先へ進むつもりです。教科書を見て、いろいろな本をどんどん読んでください(12月9日記)。

 第8回目の講議(11月30日)は、最初にアクションシート2を実施しました。これは復習をちゃんとやるように促すためのものです。1回ごとにちゃんと復習をやり、教科書の該当する部分を読み、さらに図書館などで調べ物をして、知識を定着させる作業をしてくださいね。その後、突然変異と修復機構の残りをやり、次に免疫の話に移りました。寒くなりました。教科書を見て、いろいろな本をどんどん読んでください(12月2日記)。

 第7回目の講議(11月16日)は、前回の発生のメカニズムの残りをやり、その後、突然変異と修復機構をやりました。これも途中まででしたが、続きは次回にやります。だんだん憶えることが多くなってきます。ちゃんと復習をしておいてください。

 第6回目の講議(11月9日)は、発生のメカニズムの話をはじめました。みんな退屈そうになったので、急遽後半はNHKスペシャルの1回目を見せました。前半の部分は前に見せたものでした。後半のホメオボックスのところが必要なことでした。一方的にしゃべりすぎるのかもしれませんが、もう少し参加してくれるとうれしいのですがね。後半は次回にやります。

 第4と5回目の講議は、減数分裂と実際の生殖細胞形成過程、それと発生の話をしました。盛りだくさんだったので憶えるのが大変だという意見もありました。そんなことを言わずに繰り返し見て、頭に入れてください。自分の生物学的な出自に関する重要なことですから。ウニとカエルの陥入の動画はつぎのサイトを見てください。

http://www.gastrulation.org/

 第3回目の講義は、DNAの複製と体細胞分裂のお話でした。ちょっと準備不足で迫力のあるしゃべり方ができずに、結果的に眠気を誘う講義だったようで、すみません。複製のメカニズムは、今年度のノーベル医学生理学賞の対象となったテロメアを理解するためにも重要ですので、よく理解しておいてください。
DNAの複製の動画(YouTube)はこちらにリンクがはってあります。英語の説明月のもう少し模式的にしたものがこちらです。授業のパワーポイントのスライドと教科書を見て、何回か動画を見てください。納得できると思います。YouTubeで上記のアドレスにアクセスすると、関連動画として転写や翻訳の動画へのリンクが出てきます。これらも見てくださいね。

 講義の中で見せた体細胞分裂のYouTubeのアドレスは以下の通りです。クリックすると跳ぶことができます。もう一度見たい方はどうぞ。
 植物の体細胞分裂の顕微鏡による観察はこちら、動物の培養細胞の微分干渉顕微鏡による観察はこちらです。

 細胞周期の説明はこちらが分かりやすいでしょう。こちらもいいかも。細胞周期の制御についてはこちらにありますが、ちょっと難しいかも。

 第2回目の講義は、第1回目の残りをやりました。膜タンパク質のうちの受容体の構造と働きをしっかりと理解してください。これはこれからもずっと必要になる知識です。あまり明示的には述べませんでしたが、受容体にホルモンが結合して、細胞内に起こる信号の伝達のことをシグナル伝達(signal transduction)と言います。たくさんの名前や物質が出てきて混乱したかもしれませんが、必ず復習をしてくださいね。次回は細胞分裂のお話をします。10月8日記す。

 今日は第1回目の講義がありました。なるべく単調にならずにと心がけたつもりですが、最後の方はちょっと眠気を誘ったようですね。もう少し間をおいたほうがいいのかな。どうも乗ってくると早口になってしまうようで、申し訳ありません。でも一言、最終的には皆が自分で学ばなければならないのです。講義は、みんなの心に火をつけて、面白いナーと思わせることだと思っています。どうか、少しでもそう思ったら、自分でいろいろ調べて質問してください。また、一度憶えたら、ちゃんと網のように紡いで腑に落ちるようにしてください。そうすれば忘れませんから。今日は復習のためにだいぶ時間を取ってしまいましたが、下に書いてあることをぜひ実行してください。今日の復習もね。

 今日は細胞膜の基本的な構造と膜タンパク質の概論をして、その膜タンパク質として、接着タンパク質、チャンネルタンパク質、トランスポータータンパク質、受容体タンパク質の話をしました。だんだんつながっていきます。pptファイルを載せておきますので、復習をしてくださいね。9月28日20時記す。

 「10月から始まると書きましたが、カレンダーの都合で実際には9月28日(月)から始まります。下に書いたように、2学期の講義は「生物学基礎」と「特論B」の知識を前提としています。特に細胞膜であるとか、膜タンパク質などは理解志知内と講義の内容についていくのが難しくなります。今日と明日で、よく見直しておいてください。それでは9月28日に教室で会いましょう。9月26日記す。

この講義は10月から始まります。
 「生物学基礎」と「特論B」の内容を理解して、初めて個体の生物学、さらに多様性の生物学が理解できます。時間のあるときに、教科書の第1章から第5章までを、ぜひ復習しておいてください。また、どんな本でもいいのでたくさん読んでください。

 講義の前半は「個体の生物学」、後半は「多様性の生物学」を講義します。講義に使ったパワーポイントのファイルはすべて個体の生物学のWeb上に載せてあります。下の「多様性の生物学」ホームページには参考のためにリンクが張ってあります。

 「個体の生物学」ホームページ
 「多様性の生物学」ホームページ

 さらに勉強をしたい人は、上記ホームページ内に設けてあるリンクをたどれば、世界中の該当するWebサイトへアクセスして勉強を発展させられるようになっている。英語で書かれたページがほとんどだが、ネットサーフィンを楽しんでほしい。

 本を使って発展的に勉強したい人のために、副読本、参考書もあげておく。

 副読本としては、講談社ブルーバックス、岩波新書などに含まれる生物学をあつかった本を読んでほしい。特に関係がありそうな本を掲げておく。

「理科系の作文技術」 木下是雄 中公新書624 昭和56
「essential細胞生物学」 
「生命40億年全史」 リチャード・フォーティー 渡辺政隆訳 草思社 2003
「生物進化を考える」 木村資生 岩波新書 赤19
 1988

 さらに詳しく学びたい人には、次の本を薦める。

      「進化生物学」 ダグラス・J・フツイマ 岸 由二他訳 蒼樹書房 1986


 この科目はパワーポイントを使った講義形式で行う。講義はおよそ次のような順序で進める(ただし、細部は変わることがあることを了承してくださいね)。講義に参加することは必須である。あらかじめ予習をして講義に参加すること。

  第1回 多細胞生物への道(細胞間での情報交換)
  第2回 多細胞生物への道(細胞の数を増やす)
  第3回 DNAの危機とその回避策(修復機構)
  第4回 多細胞生物への道(個体の数を増やす)
  第5回 発生における誘導とホメオティック変異、ホメオボックス
  第6回 体を守る免疫機構1
  第7回 体を守る免疫機構2
  第8回 生と死
  第9回 個体としてのまとまり
  第10回 生物多様性を考える
  第11回 多様性を促す外的要因
  第12回 小進化と大進化
  第13回 多様性の整理の仕方
  第14回 個体群生物学、生物多様性を守る


 評価は、課題に対する提出物と、定期試験期間内におこなう試験によっておこなう。小テストを行うことがある。


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作 成:TMD WWW-WG 教養部生物学 和田 勝/wada@tmd.ac.jp
2007/05/09