時間割番号: 000004 科目番号: 00010004
倫理学Ⅱ
EthicsⅡ
 
担当教員
田中 智彦[TANAKA TOMOHIKO]
開講時期 後期 対象年次 1 単位数 2
◇ 曜日・時間:金曜2限
◇ 対象学科:全学科
◇ 受入人数:15名程度
◇ 科目を履修して得られる能力(コンピテンシー)
   別表1-5)人間の思考の枠組みを知り、自らの思考を振り返る
   別表1-7)人間の心への理解を深める
   別表1-9)市民としての倫理観を養う
試験の受験資格  
◇ 期末考査・再考査・再試験等の受験資格:原則3分の2以上の出席
授業の目的、概要等  
 医療が「患者を助けたい」という医療者の善意にもとづき、また支えられていることは、誰しもが認めるところだろう。にもかかわらず、医療が、医療者が、いのちや人間の尊厳を――時にはいのちや人間それ自体を――深く損なうようなことが繰り返されてきたし、今もなくなってはいない。なぜなのだろうか。
 医療過誤のことを言っているのではない。一部の「悪い」医療者がした犯罪的な行為や、よその国・地域の出来事を言っているのでもない。例えば、患者の一生にわたる強制隔離、強制労働、強制断種と中絶、そして裁判なしの処罰――それは日本の医療が、医療者が行ったことであり、その多くはむしろ「善意」の人たちだった。また、そうした一連の行為・施策を法的に正当化しさえした「らい予防法」と「優生保護法」が廃止されたのは、戦後半世紀も過ぎた1996年のことだった。
 こうしたことは過去の不幸な出来事であり、もう済んだことなのだろうか。これからはもうそうしたことは起こらないのだろうか。だが「過去に目を閉ざす者は、現在に対してもやはり盲目となる」と言う。そうであるとするなら、むしろ今こそ、あらためて問わなければならないだろう――なぜそのようなことが起こりえたのか、と。そして、同じようなことが繰り返されるのを押しとどめるには何が必要なのか、と。
 この授業では、ハンセン病の問題を手がかりに、文献・資料を受講者みなで読み解くことを通じて、上の一連の問いを考えてゆく。それは、いのちと人間の尊厳を真に守ろうとするなら、医療に、また医療者に求められることは何なのかを問い、その答えを見いだそうとすることでもある。
授業の到達目標  
(1)「倫理的に考える」ために必要な知的構えの基本を身につけること。
(2)医学・医療の過去の問題と向き合い、その理由と来歴を理解すること。
(3)そこから医学・医療の現在と未来とをよりよくするための視点を得ること。
(4)「医療者になる」とはどういうことかについてあらためて考え、理解を深めること。
(5)「いのち」と「人間」の尊厳についてあらためて考え、理解を深めること。
授業方法  
 授業はセミナー形式で進める。テキスト(文献)は一章ずつ、みなで読み進めてゆく。受講者には授業の前に、テキストの該当箇所をあらかじめ読み、疑問点やコメントを書いて提出することが求められる。授業ではそれらをもとにして解説や議論を行い、内容について理解を深めてゆく。
授業内容  
昨年度の授業で扱った文献・資料は次の通り。
 映画『あん』と原作『あん』(ドリアン助川、ポプラ文庫、2015年)
 荒井英子『ハンセン病とキリスト教』(岩波書店、1996年)から二つの章
 映画『風の舞』『谺雄二 ハンセン病とともに生きる』(元患者のドキュメンタリー) 
 無らい県運動研究会編『ハンセン病絶対隔離政策と日本社会』(六花出版、2014年)から二つの論文
 香川知晶「「積極的に知らせる必要はない」検査――優生思想と生命倫理」(『生命倫理の源流』岩波書店、2014年)
 橘直矢「生と死と麻酔医と」(『内科』1969年5月号)
 鷲田清一『死なないでいる理由』(角川文庫、2008年)から二つの章
 内田樹『死と身体――コミュニケーションの磁場』(医学書院、2004年)から一つの章
なお、今年度の授業で一部の文献・資料を入れ替えることもありうる。
 
成績評価の方法  
◇評価:期末レポート 60%
    授業への参加度 40%(事前課題への取り組み、議論への参加度など)
◇再評価:有(レポート)
成績評価の基準  
「東京医科歯科大学全学共通科目履修規則 別表2」による
準備学習等についての具体的な指示  
 受講者には授業の前に、テキスト(文献)の該当箇所をあらかじめ読み、疑問点やコメントを書いて提出することが求められる。それはまず自分なりにテキストを理解し、その時点での到達点を言葉にした上で授業に臨むということである。授業ではそれらをもとにして解説や議論を行い、内容について理解を深めてゆく。こうしたプロセスを経ることで、自分の「読み」の深さを省みるとともに、他の「読み」の他の可能性にも自分を開いていけるようになる。そのためにも、準備段階から授業における解説・議論までの能動的な関与と、そこで学んだことの積極的な吸収・応用に努めてもらいたい。
教科書  
文献・資料はコピーして配布する。
参考書  
参考書1 ISBN 978-4779121371
書名 隔離の記憶――ハンセン病といのちと希望と
著者名 高木智子 出版社 彩流社 出版年 2015
参考書  
上記文献(『隔離の記憶』)は授業期間中、受講者全員に一冊ずつ貸与する。
その他の参考書等は授業の中で随時紹介する。
履修上の注意事項  
出欠については、出欠管理システムの記録と、教員が毎授業時にとる出欠とを併用する。
オフィスアワー  
田中 智彦:
前期:毎週月曜日 12:30〜13:30 管理研究棟2階 哲学研究室
後期:第1・第3水曜日 12:30〜15:00 管理研究棟2階 哲学研究室
連絡先(メールアドレス)  
田中 智彦:tanaka.las@tmd.ac.jp